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CSVインタビュー

CSV時代のイノベーション戦略』の著者藤井剛氏に、日本におけるCSVの現状と可能性についてお話を伺いました。

聞き手 ソーシャルクリエイティブクロス 山田英治

クロス

「そもそも社会もよくなる、企業も儲かるビジネスを創造していくというCSV(Creating Shared Value)【共有価値の創造】の考え方は、どのような流れで出てきたのでしょうか。」

藤井氏

「もともとはネスレが言っていた考え方です。で、ネスレの経営に関わっていた経営学者のマイケル・ポーターが、それをさらに発展させて本格的に提唱しはじめました。論文が出たのが2011年です。」

クロス

「ほんとに最近なんですね」

藤井氏

「はい。リーマンショックの前から、その流れはありました。環境破壊をはじめ、グローバルな課題が噴出してきて、多くの企業がこのままで大丈夫か?という意識が芽生えていた。そして2008年のリーマンショックで、その意識が加速したという感じです。」

クロス

「アメリカ型資本主義のバリバリの経営学者であるポーターも、リーマンショックを受けて、CSVに傾倒していった?」

藤井氏

「そうだと思います。アメリカ型の短期利益、株主利益中心主義的な経営のあり方に疑問をもつようになったんです。」

クロス

「最近知った『MBAの誓い』という社会運動もびっくりしました。アメリカのビジネススクールの学生たちが卒業前に『私は、株主のことだけじゃなく、サステナブルな未来のこと、社会のこと、消費者のことを考えて経営することを誓います』みたいな宣誓をwebで公開するという運動。逆にこれ以前は、株主のことしか考えてなかったのかよとつっこみを入れたくもなりましたが。その意味で、『CSV』が欧米の企業人たちの間で盛り上がっているのでしょうか?」

藤井氏

「はい、そうですね。例えば、GEやウォルマート、ネスレ、グーグルなど、経営の真ん中にCSV、あるいはCSV的なものを置いている企業がグローバル企業で増えています。」

クロス

「日本ではどうですか?」

藤井氏

「日本では、2011年の東日本大震災を機にいっきにひろがりました。ちょうどポーターが論文を発表した年でもありますし。キリンやヤマト運輸などで、具体的部署をつくってやっています。
社員レベルだとCSR担当者以外、まだまだ認知がひろがっていない印象を受けますが、経営陣にはかなりひろまっているという実感があります。
ただ、『CSV』は知ってるけど、そんなのうちの会社では、ずっと昔からやってるよ、という企業さんが多いです。たしかに戦後の日本の経営者はCSV的視点でビジネスを起こしてきた。松下幸之助さん、本田宗一郎さんとか。」

クロス
「古くは近江商人の『三方良し』。売り手良し、買い手良し、世間良し。経営理念には、ほぼどの企業にも、CSV的なことが書かれています」

藤井氏

「そうなんです。『ようやくアメリカの経営者たちも、日本的経営のよさに気づいたか』という意識の方々も多いです」

クロス

「実は、私もそう思ってました」

藤井氏

「大事なことは、『CSVは戦略』ということなんです。戦略とは差別化です。そこがまだ理解されていない気がします。
うちは社是でも書いてある。社会にいいことしています。CSVやってますと言うけれども、みんな同じ。差別化になっていない。
ビジネス戦略になっていないんです。」

クロス

「まさにイノベーション戦略としてのCSVですよね」

藤井氏

「はい。その部分が欠けているのではないかと」

クロス

「今、日本の大企業では、イノベーションが生まれにくい状況にあると思うのですが、藤井さんは、CSVを掲げることで、イノベーションが生まれるとお考えですか?」

藤井氏

「単純に、課題が大きければ、大きいほど、イノベーションは生まれやすい、ということです。そして社会課題の解決をゴールに設定することで、みんなが集まりやすい、つまりオープンイノベーションが生まれやすくなる、と考えています。

クロス

「藤井さんの著書ではそれを『大義力』とおっしゃっています。私たちも社会課題の解決をゴールに設定することで、オープンイノベーションを実現したいと考えています。」

藤井氏

「その意味で、みなさんが今やられているソーシャルクリエイティブクロスの事業は画期的だと思っています。NPOやNGOなど実際に社会課題に向きあってる人たちとエンジニア・研究者、そしてクリエイターという座組みで、具体的にCSVイノベーションを開発していく試みは新しいと思います。」

クロス

「ありがとうございます」

藤井氏

「とくに、オープンイノベーションで生まれたコンセプトを
クリエイティブジャンプによって具体的なデザインに定着させてプロトタイプをつくる。そこがすごいと思います。」

クロス

「一応、クリエイター集団なので、そこが売りです(^^)」

藤井氏

「とくにイノベーションという点でいうと、今
リーンスタートアップが注目されてますよね。素早く具体的なカタチにして世に問うて、それを柔軟に修正しながら、どんどんピボットして大きくしていく、それが成功の勝ち筋なんだと言われてますが、その意味で、クリエイティブの力を使って、具体的アウトプットとしてカタチにできてしまうのは強みかなと。そのクオリティとスピードが他社と比べて圧倒的であれば、すごくおもしろい事業になっていくんじゃないかと思います。

クロス

「がんばります。トーマツさんと組めますか?」

藤井氏

「組めます。かぶってませんので(^^)」

クロス

「これからCSVイノベーションをすすめていく藤井さんたちの戦略について教えていただけますか?」

藤井氏

「弊社のミッションは、世界で勝てる日本企業をつくるということが前提です。ですからグローバルで勝つための経営戦略としてCSVを提案しています。」
ただ『CSVって聞こえはいいけど、稼げるの?』とよく言われることがあります。現在、一部の企業さんとやってるんですけど、いいプランで上を通すのが、なかなか難しいんですよね。一筋縄ではいかない。『わかるけどさ、それで、儲かるの?これだけみんな日々の予算達成で苦しんでいる状況なのに…』というような話が絶対出てくるんです。

それでなかなかすすまないケースが多いです。
なので、私たちは、できるだけトップに近い人たちにアプローチしています。そしてイノベーションを生み出していくための新たな事業体を
社内につくっていって、そこで結果をだして、組織全体に伝播させていくことが必要かと。

その過程を通じて、『聞こえはいいけど、儲かるの?』という言葉をなくしていきたいと思っています。そういう世の中をつくっていくことが作戦ということなんです。そのためにも具体的成功事例を作っていくことですよね。」

クロス

「そうですね!『聞こえはいいけど、儲かるの?』って経営者や担当者に言われたら、『はい、儲かります、そして社会も変わります!』
と言い切れる具体的事例をつくりたいですね。

藤井氏

「かんばりましょう」

クロス

「はい。がんばりましょう」

プロフィール
藤井剛
デロイト トーマツ コンサルティング株式会社執行役員パートナー。
15年以上に渡り、電機、自動車、航空、消費材、ヘルスケアなどの幅広い業種の成長戦略策定、新事業創造、組織・オペレーション改革、CFOアジェンダ等のコンサルティングに従事。現在は社会問題を起点にした海外市場での新事業創造プロジェクトや地方自治体を核とした地域産業・雇用創造プロジェクトを多く手掛けている。
著書『CSV時代のイノベーション戦略』(ファーストプレイス)

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